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夏美と友紀
ふと目を開けると、昨日と同じように黒井くんはいなくなっていた。
その代わり、また猫の置物が置かれている。
後ろを振り返ると、まるで開けろと言わんばかりに深く黒く扉だけが浮き上がっていた。
だけど、昨日よりもっと、あたしは扉を開けることが怖かった。
きっと、良くないことが起きる。
知りたくないことを、知らされてしまう、そんな気がした。
あたしの気持ちとは裏腹に体は無理やり動き出し、扉が開く。
視界に入るのは、ただただ真っ暗な闇。
引きずられるように扉の向こう側へと、あたしの足は進んでいってしまう。
目の前が急に明るくなり、夏美とあたしが向かい合って座っている。
夏美は目隠しをされ、後ろ手に縛られていた。
どうして、こんなことになっていたのだろうか。
あたしは無表情のまま、夏美を見ていた。
どうして、縄を解かないのだろうか。
「……ゆーちゃん?いる?」
夏美のか細い声が、狭い空間に響く。
ここは、どこだろう。
「……いるよ」
普段とは違う声が出ている。
あたしは、明らかに緊張しているようだった。
「暗いね、ここ」
「うん、初めて来た」
「知ってた?この場所」
「ママに、何回か連れて来られたから」
自分の言葉で、やっと思い出す。
ああ、ここは【秘密の部屋】だ。
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