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「お邪魔して良かったのですか?」
私は流れるがままにたどり着いた社にお邪魔させてもらっていた。いたたまれず、正座をしてお二人の動きが止まるのを待つ。すると待ちに待った奏明さんが温かい湯呑みを前に置く。そして、漸く答えてくれる。
「もちろん。木花知流比売とは縁が深いしね」
「つーか、本来なら恩恵を受けても可笑しくない神様じゃねーか。お前相当やらかしてんな」
ドカッと対峙するように腰をおろした夜詩さんに言われ、ひやりとした感覚が押し寄せる。
「私何かしましたか…?」
震えた声に、傍らで座した奏明さんが眉を潜めた。
「いや、木花知流比売本人に何かありそうだ。だって君は」
と言いかけて、唇が止まる。はてと首を傾げてその顔色を伺うと、にこっと返された。
「名前、まだ聞いてなかった」
…天使。男なのに、私より可愛い笑顔。反則です。数秒の間見惚れて、優しい眼差しに気がつく。慌てて求められている答えを口にする。
「あ!はい!音花凜空、二十一歳無職です」
「綺麗な名前だね。それに、俺たち同い歳だ。何か運命を感じるね」
「そうですか?」
照れくさげに奏明さんの眩しい笑顔を見て、ハッと別の視線に気づいた。
いけない、奏明さんがあまりにも綺麗すぎて視野が狭まってしまった。もう一人のご利益様は意地の悪い笑みを浮かべていて、鼻で笑っていました。
「お前、無職って。終わってんな」
だけど、私は気になりません。
「はい。終わってますね。私の受ける呪いは、花の如く咲けば散る。成功は儚く無に帰すのです」
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