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木花知流姫神さんのことをあまり知らなかったこの時の私は、本当に、馬鹿だ。
『馬鹿ね、本当に』
「え」
今、誰かが。
辺りを見渡しても、私を見ている人なんて、話しかけてる風な人なんて見当たらない。だって、鳥居や神門通りに釘付けなんだから。
振り返るのをやめた私は、出雲大社からどんどん離れていく。まるで誘われるかのように、稲佐浜に向かって足を進めた。
人通りはある程度あるけど、大社前よりかは疎らで。そのうちの誰かが私をみている様子はない。
さっきの声は気のせいだったのか、ふと歩みが止まる。声を追って出雲大社から遠のいたのだから、気のせいだったのなら今私が稲佐浜に行く理由はない。
恋愛運が欲しいわけでもないし。
そう思って視線を移した私は、目の前に広がる光景に呼吸を奪われた。
そこは神迎えの道ではない、見渡す限りの木々に覆われた空き地。
観光客達はどこへやら。私一人、見知らぬ土地にぽつんと取り残されていた。
「そ、そんな〜!」
不幸続きな上遭難してしまうなんて。なんってついていない人生。これも、呪いのせいなのだろうか。いやいや、なんでも人のせいにしちゃだめ。でもどうやったらこんなところで迷子になるの?私は大黒様にお願いすることもできないの〜?
そわそわしてる私は、背後の気配に全く気づかず。
「おいお前」
「ひいいっ!!」
その声がかかって漸く、人がたっていることに気づいたのでした。
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