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まるで、夕暮れの空のような、深いコントラストを彩った髪色をしていて、その人は掌を当て、灼熱に燃え上がる炎に染まった鋭い瞳をこちらに向けていた。
「ここは聖域だ。どうやって入った」
白衣に紫色の袴、足袋を身にまとったその人はどう見ても神社の者で、とても不機嫌そうに私を見ている。
聖域、と言われましても。ここは正直に言おう。
「あの、私もよく分からなくて。気づいたらここに…」
「んなわけねーだろ。もしやてめぇ、恵陰者だな?」
「けい…なんですか?」
はぁ、っと私とそう歳が変わらなそうな青年がため息を一つ。仕方なく説明してくれる。
「恵まれない陰のもの。その名の通りだろ。最近出雲に恵みをこう輩が後を絶たねー。お前もそのうちの一人だろ」
恵みをこう、って。私の事!?
いやいや、言い方の問題です!
「いいいえ、なんの事やらさっぱり」
明らかに動揺して早返答になってしまった。だけどその人はあまり気にしていない。私の発言なんて元より興味ないみたいに、突き放してくる。
「悪いけどな、恵陰者と恵陽者は相いれねーんだ。自分が恵まれないからって、人の幸せを分けてもらおうなんざ思うなよ」
ザァッと、風に揺れた木々が騒ぎ出した。私を、受け入れていないのだと言わんばかりに。
そうか。人だけじゃなく、自然まで私を拒絶するんですね。
でも。
私は俯いていた顔を上げ、真っ直ぐ青年の目を見た。
「願って、何が悪いんですか」
ぴくり。その人は眉を動かし、訝しげに目を細めた。
気にくわないかも知れないけど、言わせてください!
「誰だって幸せになりたいんです!時には、何かに縋りたくもなります。それなのに貴方は、人の気持ちも知らないでよくそんな酷いことが言えますね!最ッ低!」
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