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バシッと言い放った。半ば泣きじゃくる言い方で。
そして、しまったと思った。
青年は目を丸くして頬を引き攣らせ、硬直している。
今まで溜まっていた不満を、見ず知らずの人にぶつけてしまった。ぶつけられたその人は、わなわなと口をひらく。
「なっっ…!最低?俺が?」
「あの、ごめんなさい。言いすぎましたっ」
どうしよ〜!いくら何でも罰当たりなことをやってしまいました。出雲大社の者に失礼なことを…。
深々と頭を下げた私は、彼が何か慰めの言葉一つ言ってくれないと顔を上げられなかった。
と、不意にポンっと頭に暖かい温もりが落ちた。きっとこれは、掌だ。
ハッと顔を上げる。けど、頭を撫でたのは、青年ではない。だって彼は、まだ驚愕した顔でこちらを見ているのだから。
違う。さっきより、信じられないという表情だ。
「かっこ悪いなぁ、夜詩」
近くで鼓膜を刺激する柔らかい声。
「てめぇ!何でここに!帰ってたのか!?」
青年は、その人に向かって、牙を向いている。その視線の先、私の傍らには、見知らぬ美青年が。
よく見れば二人は少し似ている顔立ち。
夕暮れ色の髪をした突っかかってくる青年に対して、傍らの人は、朝焼け空のような澄ん色をした髪で、赤というより橙や黄色みがかかっていて、瞳には朝焼けが深く落ちている。
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