最ッ低な出会い

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 木々のざわめきが淑やかになると、朝焼けの彼こと奏明さんが徐に問いかける。 「それにしても不思議だなぁ。どうやってここに来たの?」  その疑問は夕焼けの彼こと夜詩さんと同じものだった。彼が言うには、ここは聖域と呼ばれる場所で、私みたいな一般な観光客が踏み入れてはいけないらしい。  私だってどうやってそんな凄いところに立っているのか聞きたい。 「それがよく分からなくて。あっ、でも…」 「なんだ」  非日常な出来事を思い出した私を、夜詩さんが噛み付くように促した。その鋭い瞳に向かって答える。 「声がしました」 「声?」  そのことでより一層眉間のしわを濃くした夜詩さんは嫌そうに奏明さんを一瞥する。 「恵陰者にも聞こえるのか?」 「さぁ?聞いたことがないね」  お二人は顔も見ずに会話をしている。なんだか引っかかるところはある、けど。  この会話からして、と私は期待を込めた問いをかける。 「御二方には神様の声が聞こえるのですか?」 「まぁな」 「まぁね」  …被った。 「真似すんじゃねえ!!」 「お前こそ、気色が悪い」  やっぱりそういう反応しますよね。このお二人方はお互いに嫌ってるみたいですが、息はぴったりなようで。  なんだか微笑ましく頬が緩んでしまう。と、 「笑うな!」  夜詩さんが噛み付くように怒気を飛ばし、私は少し驚いてしまう。
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