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「とりあえず、ここを出よう。長居するとろくなことがないからね」
奏明さんは夜詩さんのことなど気にも留めず言って、私はハッとする。
えっ…!じゃあ私、このまま誰にも会えずにさ迷ってたら、そのろくな事に遭遇してしまったのでは…。
背中が凍りつくのを感じていると、夜詩さんが吠える。
「まさかてめぇ!戻ってくるつもりかよ!」
「うるさいな。お前は少し黙ってろ。いや、永遠に失せな」
なんだろう。すごく息のあったやり取り。
「あの、お二人は兄弟ですか?」
思わず聞いてしまった。するとそれに先に反応したのは夜詩さんで、信じられないという眼差しを向けている。
「ばっっっ!」
予想外過ぎたのか、返答に詰まっている。その代わりに奏明さんが笑った。笑った?
「ふふ」
その笑みは、どす黒いものを思わせて、
「違うよ。こんなのと血が繋がってるなんて、反吐が出る」
「はぁ…」
御二方の間に見えない深い溝があることを私は知った。
「そりゃこっちの台詞だ」
このお二人方。超絶仲がよろしくない!
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