0人が本棚に入れています
本棚に追加
case 1
鍵はかかっていなかった。
玄関に黒い大きな靴が半分ひっくり返って脱ぎ捨てられている。
ママは仕事で、また何人目かの新しいお父さんと言う人が居るのかもしれない。
台所でポテトチップスの袋を思いっきり引っ張って開けお腹を満たす。「やぁおかえり」
振り向く間も無く手を引っ張られて口を押さえられた。
いつものことだ。お父さんと言う人が私のパンツに手を入れて痛いことをする。
何人もの新しいお父さんはみんなおんなじだ。
「痛い」と言うと大概のお父さんと言う名の人は私を叩くから我慢するしかしょうがないのだ。
涙がスーッと頬を伝う。
どこかで小さく「ママ」「ママ」と私の声が聞こえる。
小さな手が私の頬をパンパンと叩く音で目が覚めた。
何度見ても嫌な夢だ。顔を覗き込むようにその小さな女の子は私を見ている。
小さな頃の私と同じ顔で…
スマホに手を伸ばし時間を見ると11時だった。
「あーお腹空いてんのか❓」
なかなか言葉を話さない私の娘はじっと待っている。
台所へ行き、ポテトチップスの袋を開けて娘に渡す。
貪るように食べる娘の隣に寝転んでまた1日が始まる。
スマホのアプリでドラゴンの絵をタッチして私は今から闘いに行くのだ。
油のついた手で娘が大事なフィギュアに手を伸ばした。
「あーなにすんだよ」頭を軽く叩いた。
よろけた娘はそのまま倒れこみ泣き叫んだ。
「あー泣くな またうるさいおっさんとおばさんが来るだろ」
片手で娘を抱いた。少しして泣き疲れお腹も満たされた娘は眠り、ゆっくりと闘いの旅が始まる。
最初のコメントを投稿しよう!