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エピローグ
夏祭りの夜、特等席に向かう途中で小学生から声をかけられた。
「にいちゃん達、お面を被った女の幽霊の噂知ってる?」
俺とナツオは顔を見合わせた。どうやら俺たちの母校では、10年前にナツオが作った幽霊話が根付いているようだ。
マサキの死後、うちの学校が大騒ぎになっていたことを思い出した。
ナツオは、優しく笑って答えた。
「知ってたか?お面の子に会っても、思う存分一緒に遊んでやれば呪われずに済むんだぜ」
形はどうあれ、10年前のマサキの願いは叶っているのだと気付いた。神様になったマサキは、自分でその願いを叶えたのかもしれない。枝に巻いた便箋にはこう書いてあったのだ。
『時々でいいから、誰かが私を思い出してくれますように』
真っ暗な夜空に、ぱっと花が咲いた。色とりどりの光が屋上を照らしては消えていく。
左手がひんやりとし始めた。
あれから、毎年花火を見るたびに、初デートの日のマサキの手の感触が俺の左手を包み込むようになった。
これからもきっと、こうして思い出し続けるはずだ。つらい体にもかかわらず、精一杯俺の手を握ってくれていた、あの冷たい手を。
「もう、ちゃんと呪ったから!」
不意にマサキの最後の言葉を思い出す。
あぁ、そうか。
俺はいつだって、気付くのが遅い。
花火を見ると、ひんやりする左手。
あの日マサキにかけられた呪いって、これだったんだ。
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