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『新庄鷹斗様
今、病院に帰ってきてこの手紙を書いています。今日は本当にありがとう。とても楽しかったです。
怖がらせてごめんね。って、全然怖がってなかったよね。夏生の言った通り、鷹斗は幽霊や呪いなんて全然信じないんだね。おかげで作戦大成功です。
突然だけど、私はもうすぐ死にます。親同士が仲の良い夏生だけはこのことをずっと知っていました。
この病気になってから、私の体はどんどん細くなって、顔はどんどん白くなって、手はどんどん冷たくなってしまって、声はどんどん出なくなって、本当に幽霊みたいになってしまいました。
それでも、最後に鷹斗に会いたくて、でもこんな顔じゃ会いたくなくて、ずっと悩んでいました。好きな人にこんな姿、見られたくなかったから。
そしたらね、夏生が「お面被って会えばいいじゃんか。夏祭りなら目立たないよ。2人ともお面を被れば、誰かに怪しまれることもない」って。それが作戦の始まりでした。確かに今なら、声でバレることもないと思ったの。
会うことはできても、もし私が死にかけてるなんて知ったら鷹斗はいつもみたいに接してくれないでしょ?だから私は、私であることも隠すことにしたの。
私だとバレずに、仮面を被ったまま鷹斗と遊ぶ。それが幽霊作戦です。幽霊を利用する作戦なんて、夏生らしいよね。
「あいつは夏祭り大好きだし、鈍いやつだから、この作戦はピッタリだぜ」と夏生は言ってました。流石、親友だね。本当に上手くいっちゃった。
あ、夏生の流したお面の幽霊の噂も全部計画のうちです。クラスのみんなには悪いことしたなぁ。
本当はね、最後に神社にも行って願い事したかったんだけど、もう体がしんどくて。
夏生から特等席まで登るのしんどいぞって聞いてて、覚悟はしてたんだけど、ダメでした。
だけど、あそこで見た花火は最高に最高に綺麗だったよ!
また見たいなぁ。
あと、タコ焼きを食べた時、私は助からないと言ったら怒ってくれたよね。本当に嬉しくて、お面の向こうで泣いてしまったよ。
私も大切な鷹斗を呪う幽霊がいたら、怒鳴ってやるからね。もうすぐ本当の幽霊になるから、結構現実的な話だよ。
鷹斗、今日はありがとう。
そして、今までも、ありがとう。
ずっと同じクラスで、私はとても幸せでした。
鷹斗と初デートができて、本当に良かったです。
真崎翔子』
封筒の中にはもう一枚便箋が入っていた。
俺はそのまま裏門を出て神社に向かい、木の枝にそれをくくりつけた。
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