人ごみ

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人ごみ

人ごみ 「今日は来てくれてありがとう。でもごめんね、人ごみは苦手って言ってたよね?」 ー 苦手だって言ってる所に連れ出したけど怒ってないかな? 「ここの花火は特に綺麗だってみんな言ってるからさ、どうしても一緒に見たかったんだ」 ー 花火って好きなのかな。もしあんまりだったらどうしよう? 「じゃ行こっか。ほら、はぐれるといけないから」 ー 今更言ってもどうにもならないよな。だったら今日は何としてもきっちりエスコートしてあげないとな 「俺?あぁ、俺は全然大丈夫なんだ。なんて言うかな、賑やかなところって楽しいじゃん?エネルギー貰えるっていうか...」 ー 確かに好きだけれども... ホントは彼女といる時は二人きりがいいんだよな 「浴衣似合ってるね。その、なんていうか、。...かわいいよ」 ー 可愛いし嬉しいけどさ!できるなら他の人には見せたくないな 「疲れてない?そこのベンチで少し休憩してく?」 ー きっと人多い所慣れてないよな。ちゃんと気配りしてあげないと 「え、本当に大丈夫?無理してない?慣れない人ごみでしょ?そう?分かった。じゃあ行こっか」 ー 大丈夫なのかな。もしかして急いでくれてる?せっかく花火に誘ったのに嫌な思いさせちゃ意味ないよな 「ううん。まだ大丈夫だって。花火始まるまでもうちょっとあるし。それにあんま人いなくてよく見えるトコ教えてもらったんだ」 ー 人の少ない所で二人で花火がいいな。その方がムードありそうだし。それにそっちの方が多分喜んでもらえるよな 「本会場で見たいって?その方がきっと大きく見える?うーん、そうかなぁ。きっと人多くて大変だよ?でもそっちがいい?分かったよ。じゃあそうしよう」 ー さっきから無理して合わせてくれてる?気、使わせちゃってるのかな? 「あのさ、さっきから色々無理して合わせてくれてるよね?今日は楽しんで欲しいんだ。だからさ、本当のコト言ってよ」 それまで小さな反応しか見せていなかった彼女は意を決したように頷くと、消え入りそうな声で答えた。 「あのね、えっとね、その、人ごみは苦手なんだけどね...そっちの方がくっついていられるし。それにね、手、繋いでくれるでしょ?」
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