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逆点の発送
「大変だ!調子に乗って隣の家の柿の実を全て食いつくしてしまった!何とかしてくれ太郎冠者!」
「なるほど。では、この植木ばさみで木の枝をばっさり切ってしまいましょう。えいえい」
「な、なんということをするのだ!これでは家の者にますます申し開きが立たぬではないか!」
「大丈夫ですよ、私に任せなさい。こうして切った枝を組み合わせてぐるりと囲めば、ほら、立派な垣になりました。これで元通りです」
*
「大変だ!長寿の薬のもととなる蝸牛を連れてこいと言われたが、どんな生き物かさっぱり分からん!どうにかしてくれ太郎冠者!」
「なるほど。では、こちらの獣を連れて行くとよいでしょう」
「なんと、これは蝸牛ではなく野牛ではないか!いかに和尚様が耄碌しているといえど、これでは流石に誤魔化せまい!」
「大丈夫ですよ、問題ありません。こいつには角もありますし、殻はなくても力があります。これをけしかけて追っかけられた和尚様が走り回れば、そりゃあ長生きもできるでしょう」
*
「大変だ!和尚様が大事にしている掛け軸と盆栽と屏風を全て台無しにしてしまった!助けてくれ太郎冠者!」
「なるほど。では、和尚様が何より大事にしている水飴の壺もひっくり返してぶちまけてしまいましょう。えいえい」
「うわああ、何をするのだ太郎冠者!ああ、こうなっては腹を切って詫びるしかない!明日から俺の妻子は路頭に迷うであろうよ!」
「大丈夫ですよ、何も心配する必要はありません。壺をひっくり返してボツにしたのですから、この話はこれでお終いなんです。明日なんて存在しません」
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