学校公開処刑

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学校公開処刑

 明日は学校公開処刑の日だ。国民の3人に2人が前科を持つこの時代、止まらない凶悪犯罪の発生率を抑えるために凶悪犯の血縁にある子供は惨たらしく殺され、その様子は高画質で中継される。罪悪感かストレス解消か、学校公開処刑があった日は犯罪の発生件数は少し下がるらしい。  残念ながらそれでもゼロにはならないので、私のような哀れな子羊の選出に困ることはない。こんなの残酷すぎる、という人もいるがその人だって犯罪者だ。聞く価値などない。  どうせその人だって真剣に止めるつもりなんてないのだ。ちょっと真面目に見ていれば、1月に教卓の上で人体模型の代わりにお腹を開かれたのと、7月に鉄板の上で後転が出来なくて焼け焦げたのが同じ子供だってことくらいはすぐに気づくはずだ。珍しく1月は顔がキレイに残っていたんだし。  処刑される私たちは、本物そっくりに作られたアンドロイドだ。複雑なことはできないけど、画面越しにちょっと見ただけでは区別がつかないくらいに精巧だ。この大犯罪時代に、前科を持たない貴重な子供を皆様の憂さ晴らしのために殺すなんて勿体ないことをするわけがない。そんなことも考えずに残酷だ残酷だと繰り返すのは、それだけ血なまぐさい娯楽に酔っていたいのだろう。  それでもたまに思うのだ。血に似た液体を流すこの体が本物だとしたら。鉄の檻に触れれば冷たさを感じるこの指が、樹脂なんかではないとしたら。私がアンドロイドだというのが洗脳か何かで植え付けられた記憶で、明日私は本当に死んでしまうとしたら。  いや、そんな便利な技術があったら犯罪者の更生に使うだろう。だって、本物の子供を使う学校公開処刑にメリットなんてほとんどないのだから。   よっぽどの嗜虐趣味がどこかにいない限りは。
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