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それから十分後。五十八匹のサンマは六匹まで減り、ようやく冷蔵庫に入る数になった。
何匹かは塩焼きにしようかと思ったが、ノアもアオイも、それからユナも、生のままでバクバク食べてしまった。まぁいいが。
「むぅぅ」
そして一番の功労者のノアは今、丸く膨れた腹を天井に向け、ごろんと横になって呻いている。
「この体だと、あんまり入らないよ……」
「光」を浴びると「ちょっと食いしん坊なヒト」くらいになるのだろうか。また新たな発見だ。
「ごちそうさま? おいしかった? 」
ユナが腹をぽんぽん叩きながら言う。
「でもユナちゃん、どうして『氷の海』からここへ? かなり遠いですよね? 」
ん、そうなのか?
「は、はいっ。『氷の海』は『島』の一番北側……『博物館』の更に奥地です。一年を通じて氷が浮かぶ、とても寒い場所だとティトさんから……」
アオイの答えを聞くと同時に、俺は「島」の地図を出す。前回の旅で行った「博物館」。その奥の「魚たちの楽園」を超えた先。そこが「氷の海」。
「島」の南にある診療所とは、丁度正反対の位置だ。そんなに遠くから、わざわざ何をしに?
「ユナ、ヒト探しに来た? この辺にいるって聞いたけど、知ってる? 」
あ、俺ですか。
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