【1】変化

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 私の体が水を切り裂く。目の前には無数の輝き。私は体を翻し、輝きの中に突っ込んで行く。  群れから一匹が離れた。私はぐわっと口を開け、サンマに歯を突き立てる。ぱっと広がる血。動かなくなったサンマを咥えて海面へ。 「ぷはぁ……」 「お疲れ様です」  海面にはアオイがいた。口には一匹のサンマ。  鼻の場所が変わったから、前と同じでは息ができない。ちゃんと顔を全部出さないとだから、少し不便。  カイに頼まれたサンマは三匹。私が一匹、アオイが一匹捕まえたから、残りは一匹。カイの分。 「カイのは私がやるよ。アオイは先に帰って……」  私はサンマを手に持ち替えて言う。 「いえ、カイさんの分はわたしがやりますっ。ノアさんがお先に……」  アオイもサンマを握って言い返す。  アオイはカイのことになると、凄く一生懸命だ。普段は大人しいけど、カイが関わると途端に強情になる。何でだろ? 「むむむ……」 「それでは……」  こうなったらやる事は一つ。 「先に捕まえた方が勝ちだよ! 」 「ふふっ、ではお先にっ! 」  アオイは翼を広げ、水面を走りながら飛び立つ。飛ぶときは助走が必要なんだって。  よし、私も負けないぞ。もう一度海の中に潜り、輝く鱗を追いかける。波を切る。体がしなる。水の塊を貫く。どうせなら沢山獲りたいけど、食べきれないと勿体無いからやめておこ。  こうやって魚を捕まえるの、久しぶりだなぁ。群れにいたことを思い出す。  そうだ、母さんは元気かな。暫く会ってないけど、寂しがってないかな……  うわっ、目の前に何か落ちてきた。アオイだ。  私をちらっと見て、笑みを浮かべて泳いで行く。このぉ。水中なら私の方が速いんだぞ。見せてやる。  私たちは夢中になってサンマを追いかけた。時間が経つのも忘れて飛びまわる。そして気が付いた時、私たちの前には……
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