【2】声

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 飛び出した刺胞は深々と突き刺さり、更に毒液を注入する。流石のスイカイも一瞬戸惑ったようで、全身がびくっと震える。  触手の隙間から橙色がちらりと見える。フィリーだ。後は彼がイソギンチャクを誘導し、心臓を突き刺すだけ。  だがどう言うわけか、フィリーは動こううとしない。こちらを向いて何か言っているのは分かるのだが、遠くて声が届かない。 「アオイ、フィリーを連れて来てくれ! 」 「わかりましたっ! 」  白い翼がフィリーに向かって飛んでいく。待ち受けるのは猛毒を持つ二匹の生き物。  肌色の短い触手と、透明で巨大な毒針。その僅かな隙間を巧みに潜り抜け、アオイはフィリーの前にたどり着いた。 「おい、危ねぇぞあいつら⁉︎ 」  アオイの腕がフィリーを掴もうとしたその時、スイカイの腕の一本が持ち上がった。  それに気が付いたのか、フィリーが俺の渡した槍を投げつける。しかし槍は緩い放物線を描き、スイカイの腕を外れて地面に落ちた。 「くそっ‼︎ 」  その時真っ先に飛び出したのは、無謀なことに俺だった。  ジャンプが得意なノアやユナより、電撃を放てるトゥぺさんより、できることなんて少ないのに。戦うよりも、作戦を考える方が得意なはずなのに。 「カイっ⁉︎ 」 「どしたの? 」 「おい兄ちゃん、お前じゃ無理だ! 」  周りの声も聞こえない。今はただ、あの二人を助けることしか頭になかった。  作戦もアイデアも何もない。何も考えていない。なのに俺は、次に何をしたら良いかをはっきり理解していた。  俺の足が淡い輝きを放つ。スピードが上がる。落ちていた槍を一瞬で拾い上げる。  それから先は一瞬だった。俺は跳んだ。槍を薙ぎ払った。スイカイの腕が吹き飛んだ。  五メートルはある巨大なイソギンチャク。その上にのし掛かったスイカイの持ち上げられた腕。高さは六メートルはあっただろう。  俺はその位置にあった腕を斬り飛ばした。ただのヒトのはずの俺が、自分の力だけで。
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