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「……大丈夫ですか、ヒトの子」
何だか温かい。それに俺、何かに埋まっているような……?
「生き物一匹の危機じゃありませんし。これくらいはいいですよね」
この声には聞き覚えがある。確かカキを取りに行った時、ユナに会う直前。
「あぁ、砂に埋めてすみません。ああしないと間に合わなかったので。今戻しますね」
その声と共に、俺を包んでいた砂が宙に浮き始めた。まるで竜巻のように渦を巻き、周囲の砂を巻き込んで空に登る。
呆気にとられる俺の前で、宙を舞う砂はスイカイ目掛けて降り注いだ。何処にあったのかと思うほどの大量の砂。それがスイカイの体を埋め尽くす。
「さ、今のうちに! こっちなら安全です! 」
立ち上る砂煙が晴れた時。砂に埋まったスイカイの前に立っていたのは、海のように深い青髪の少女。
「リュウグウサマ……あんたが……? 」
トゥぺさんの驚く声。
「『島』の守護者が一人、リュウグウ。力をお貸しします」
以前とは全く違う、凛とした鋭い声。リュウグウサマは青と白のフリルワンピースを棚引かせ、右腕を高く挙げた。
凄まじい風が俺たちを包む。ごうごうと音が耳に響く。吹き荒れる風は周囲を灰色に染め、やがて何も見えなくなる。
体が浮遊感に包まれる。そして俺の意識は、再び闇に包まれた。
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