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頭が痛い。体が重い。足が動かない。だけど背中は温かい。
目を覚ます。ここはどこだろう。暗くて静か、風の冷たさ。定期的な揺れは波? 聞こえるのは波の音?
「お目覚めですか。よかった」
声が聞こえた。リュウグウサマだ。
「みんなは……? 」
何とか言葉を絞り出す。ノアは、アオイは? ユナとトゥぺさんも……
「大丈夫。みんなそこで眠っています」
体を起こすと、俺の周りにはノア達。普段は片目を開けて眠るノアも、今は両目を閉じて、静かな寝息を立てていた。
「全員『光』がかなり減っていましたから。疲れちゃったんですね」
そう言うリュウグウサマの顔も、少し疲れて見えた。おそらく付き切りで俺たちを見ていてくれたのだろう。申し訳ない。
ふと周りを見渡すと、どこか見覚えのある景色。そうか、ここは船。俺が乗ってきた船の上だ。
「勝手に使ってごめんなさい。ここなら安全かと思って」
リュウグウサマはすっと立つ。
「『島』の風に頼んで、皆さんをここまで飛ばして貰いました。どこか痛くないですか? 加減はしたつもりですが……」
「ああ、別に……」
ちょっと待て、「風に頼んだ」?
「あは……私、『島』の自然なら何でも動かせるんです。木とか風とか、あと水も。ちょっと頑張れば、山を噴火させることも」
アカバネサマは「全てを燃やす炎」を持っていたが、彼女も負けず劣らず凄まじい能力だ。規模でいえばアカバネサマ以上かもしれない。
「あ、安心してください! 余程のことがなければしませんから。それに無闇に命を奪うことは絶対ないので」
「あまり安心できねぇな……」
「あは、そうですね」
こうして見ると、普通の少女なのにな。にしても、リュウグウサマは何の生き物なんだろうか。名前からしてリュウグウノツカイ?
「いえいえ。私、色んな名前があるからどれって決めてないんですけど……有名なのだと『シーサーペント』とか『リバイアサン』とか? 」
微妙にわかりにくい。名前くらいは聞いたことあるが。
「うーん、そうですね。『龍』‼︎ これならご存知ですか? 」
龍か。古来より龍は水に結びつけられることが多い生き物だ。中国では鳴き声で雨雲を呼び寄せ、干ばつから人々を救う伝説があったり、インドではナーガという名で水神として祀られていたり。守護者にはぴったりな生き物かもしれない。
「それにしても驚きましたよ。まさか貴方がカイ君なんて。昔と変わらず、綺麗な『光』ですね」
……は?
「あれ、知らなかったんですか? だってさっき『光』を……」
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