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船はゆっくりと北に進む。ノアもアオイも、それからユナも。海にも空にも行かず、船の上で大人しくしていた。
命は助かったものの、今回は良い結果を残せなかった。スイカイも倒せず、フィリーの家も食べられて、リュウグウサマに頼り切りで。今度は失敗しないように、俺がもっとしっかりしないと。
だが、俺がスイカイの腕を切り落としたのには驚いた。どうして「光」があるのかは分からないままだが、使える力があるなら使わない法はない。
どうやら俺は「光」を使えば、高く跳んだり力を強くすることができるらしい。(生き物の声を聞けるのも、「光」の効果だろうか? )
そうだ、いつでも使えるように、ノアに「光」の使い方を聞いておくか。そう思ってノアに声をかけようとした時、突然俺の腕が掴まれた。
「無理は駄目ですっ。カイさんが戦わなくても、わたしが……」
アオイだ。俺の考えを読んだのか?
「でもさ、戦える人数は多い方がいいだろ? 昨日みたいなことがあったら、みんなに任せてばかりもいられないしさ」
「……そうですよね。昨日のスイカイ、強かったですもんね……」
アオイの手は俺を放さない。
「でもっ、『光』を使ったらカイさん、また倒れちゃうんじゃ……」
「そうならないように訓練しようと思うんだ。ほら、練習すれば使いこなせると思って」
「でもでもっ、カイさんが危ない目にあったら、わたし……」
今日のアオイはやけに強情だな。そう言ってくれるのは嬉しいが。
「でもさ、アオイだって戦うの、得意じゃないだろ? アオイが無茶して怪我でもしたら、俺だって悲しいさ。俺に『光』があるなら、みんなを守るために使いたい。多少の危険は覚悟の上だ」
「みんなを守る、ため……? 」
「ああ」
アオイの頭をぽんと撫でる。アオイは暫く瞳を潤ませていたが、やがて俺を掴む手を放した。そしてそれ以上は何も言わず、黙って船室の外に出て行った。
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