【1】変化

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「むぐむぐ」  もう一つカキを採ってやろうとしたら、「ユナ行ける」と、自分で跳んで採ってしまった。そして今、むぐむぐ言いながら食べている。 「……始めての味? 不思議なもの食べるんだね? 」  少し齧って捨ててしまった。口に合わなかったのだろうか。 「それで、あなた誰? ここで何してるの? 」  ユナという少女は尋ねる。何だか不思議な喋り方。 「俺はカイ。カキ……この木の実を取りに来た。あんたは? 」 「ユナはユナ? ダンダラカマイルカ? 」  ダンダラカマイルカ。南極圏などの冷たい海で暮らしている、小さなイルカの仲間。  なるほど。確かに外見はノアに似ている。近い種類の生き物だと、服装も似た物になるのだろう。 「崖の向こうに戻りたいんだが……連れて行ってくれないか? 」  小さくてもイルカだ。俺を運べないだろうか。 「ん? ユナ頑張る? 」  ぐっと拳を握り、体の前でガッツポーズ。良かった。これで診療所に戻れる。 「じっとしてて? 『光』使うよ? 」  ユナはそう言うと、俺の腰をぎゅっと掴んだ。  体が地面を離れ、柔らかな浮遊感に包まれる。続いてズンと重みを感じれば、既に体は地面に戻っている。振り返ると、崖の向こうにはカキの木。俺たちは反対側に戻っていた。 「ん? これでいい? 」 「助かったよ。ありがとう」  ……そうだ。せっかく助けてもらったから。 「良かったら、うちに来ないか? サンマがあるんだ」 「サンマ? 」  おぉと息を漏らし、目をキラキラ輝かせる。注文したのは三匹だが、俺の分をユナにあげれば良いだろう。 「着いて来てくれ。すぐそこだ」  ん、とユナは頷くと、俺の後に続いてぴょこぴょこ歩く。一歩進むたびに「サンマ、サンマ」と呟いているが、そんなに好きなのか。これは腕を振るって料理しないとな。
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