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要は僕の話し相手ですね。物語の実質的な主人公。
僕の立場は状況説明とサポート、でしょうか。もちろん無闇なヒントをあげたりなんかはしません。案内人ですから。
目的地は、とある温泉宿。
少女が一人で温泉宿目指して歩いていく……訳ありっぽい雰囲気がありますけど、実はただ物好きなだけなんだと僕は思います。
「勝手に人を変人にしない」
という彼女の抗議は流して、つまり物語の都合上、少女は温泉宿に向かっています。
「それ、物語的にはもっとやばいと思うけど」
そう言う少女の名前は……いっそ、ナビ。本名とかは一切不明ということにします。
「いっそって」
――いいんです。それより、ようやく屋根に雪の積もった二階建ての古びた建物が見えてきました。林と枯草ばかりの空き地に囲まれていますが、低い木の柵に中の敷地の庭園などはよく手入れされています。
ナビちゃんは最後の力を振り絞ってその敷地内へと、金に群がる亡者のような足取りで踏み入っていきました。
「説明がいちいちおかしい!」
性分なもので。
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