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夜篇
――はい、戻ってきましたよ、ナビちゃん。
「テレビ的場面転換、不自然でしょ」
――伝統的手法ですから。さて、夜です。午後8時。
「もう寝たいんだけど。だいぶ眠いし。何で退屈で面倒くさい謎の食事会のときにはいなくてこんなタイミングで戻ってくんの?」
――お泊まり会でも修学旅行でも、やっぱり夜は特別じゃないですか。流すのはもったいなさすぎます。
「場面的にどうでもいいのが続きすぎだと思う」
――いえいえ、物語的には重要なんですよ、たぶん。
「案内人がたぶんって言っちゃってるし。……推理小説に必要? これ」
――推理には不要かもしれませんけど、小説っぽくしておきたいじゃないですか。つまりこういうのまでなくなると小説かどうかすら怪しくなってくるから気をつけろ、的な。
「危うすぎるね」
――タイトルだってぎりぎりですよ。『小説』って入ってますけどナビちゃんは体験してるわけですからね。ナビちゃんにとっては案内されてるのは小説じゃないわけで。
「要は推理小説っぽいシチュエーションを読者に対して案内する人ってことでしょ。あたしにじゃなくて。あんたが人かどうかも怪しいけど」
――姿がないのが最大のネックですね……。っていうかさっきからせっかくの夜なのにそれっぽい話がまったくないですね。
「夜っぽい話? ……誰か好きな人いる?」
――ナビちゃんです!
「はい、終わり。じゃ、おやすみー」
――全然手応えがないんですが……うーん、何でいつもこんなふうに方向が逸れていくんでしょうか。
「いやもう予定調和みたいなもんでしょ」
――まあとにかく、本番は明日ですから。夜篇はここまででおしまいにしておきましょう。
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