問題篇2 事件発生

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 信者の皆さんが向かう先には大きな門と、その脇に小さな通用口と詰所があり、別の警備みたいな信者が何人か待ち構えています。  もちろん監視カメラも完備。大きな門と通用口、詰所の全部をしっかり捉えているので脱獄が難しそうで燃えてきます。  実際このエリアから移動するには空とか塀の上以外では、門か通用口しかありません。 「本日は特別な催しのため、念のため皆さんにはこちらで本人確認のチェックを受けていただきます」  つまりカードキーとその持ち主が正しい組み合わせであるのかのチェックです。カードキーの電子情報とその持ち主の顔を目視で確認しますが、逆に言えばそれだけのことです。  人数が多いのでそれなりにチェックに時間がかかりつつも、特に問題なく全員が済み、ようやく門の横の機械に警備っぽい信者さんのカードキーが差し込まれ、人間用にしては大きい門が左右に自動で開いていきました。わりと静かで滑らかな動きです。  かかった時間は15分くらいですが、一人でならさっきの玄関から塔までは普通の範囲内の速度で急いで歩けば7、8分の距離です。  門が開くとやや神経質なまでに整えられた芝生が広がっているのがまず目に入ってきます。その芝の中、視界の正面に土の道が続いており、視界のやや右側のほうには塔がそびえています。そしてその塔の下、向かって左側に塔に接するように土の盛り上がった部分が見えます。  それは穴の外縁。星中塔のあるエリアのど真ん中にあるのが例の天穴です。  そして塔の正面は穴のある方向。  土が盛り上がっているので、穴自体はここからは見えません。自分が落ちそうになるほど近づかない限り、穴の中は見えません。  穴のさらにずっと左のほうにテント小屋のようなものもあります。そちらのほうには今現在は人はいません。  人がすでにいたのは主に塔と穴の周囲、数にして20人足らずですね。  当たり前のように白い服を着ていて、あだ名のつけようがありません。 「集合は混乱を避けるため、時間をずらしています。それもあり、少し催しの時間が遅れることもありますので、しばらくお待ちください。これからまだまだ他の棟から集まって参りますので、決められた範囲からは出ないようにお願い致します」
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