問題篇2 事件発生

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問題篇2 事件発生

 朝。風のない快晴です。  寮には就寝時間と起床時間があり、起床は通常午前8時半なんですが、この日は特別なので早朝です。  あまりにも無駄なシーンばっかりが続きすぎるのもアレなので、目覚まし係を任命された僕が子守唄を全力で熱唱した場面は流して、着替えを終えた後に昨日の玄関ホールに集合した場面に移ります。  顔ぶれは昨日と同じ。妖怪さん……じゃなくて狐さんでしたっけ。その人が右手につけた腕時計をちらっと見てから微笑で言います。 「本日朝7時より、天穴通過の儀がございます。お日柄もよく、予定通り行うことになりますので、皆さんには今から星中塔へと移動していただきたいと思います」  新しいワードが出ました。星中塔とは、五芒星の真ん中に当たるエリアに立っている細長い建物で、この教団の教祖や幹部などがここで暮らしています。全員じゃないですけど。  狐さんを先頭に三列になってついていきます。ナビちゃんは狐さんのすぐ後ろにつきました。そのとき玄関の上の時計を見ると、針は6時ちょうどを指していました。既に日差しは結構強め。  玄関から外に出ると、正面に高い塔の上部が見えます。真っ白の外壁の円筒形の塔には、小さい窓がいくつかあります。そして屋上には、プールの飛び込み台みたいなものが突き出していました。  星中塔はこの寮よりもやや高い建物です。しかし、塔は寮のあたりからは上部しか見えません。なぜかというと、それ以外の部分はこれもまた白い、塀に遮られているためです。  今出てきた寮を囲む塀の形は、今ナビちゃんが振り返って見える範囲においては、上から見たならほぼ三角形のような形状。それぞれの寮の名前が五芒星を意識したものであるということを踏まえて考えれば、もう答えはわかったも同然ですね。  要は全部の星棟のあるエリアと星中塔のあるエリアの塀の形を上空から全体的に見下ろしたなら五芒星のような形に見えるわけです。  現状は、今いるエリアと隣接した五角形のエリアに向かっているということになります。  なんていうか、そんなにお金かけなくてもやりようはあったんじゃないでしょうか。  塀の高さは六階建ての寮の屋上とほぼ同じ高さ。フェンスや旗は除いた状態の話ですが。上のほうには人が乗り越えられないように長い金属の棘が下向きに並んでいます。はしご持ってきても上れない仕様ですね。  ここはいったい何の施設なんでしょうか。脱獄系サスペンスも嫌いじゃないですけど。
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