問題篇1 事件の舞台

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問題篇1 事件の舞台

 とある山の中にある真っ白な建物。  一階に舞台のある玄関ホールがあり、20人ほどの白装束の集団が、木製の座り心地の悪そうな椅子に座って壇上を見つめている。  ……うん、口調を変えると普通の三人称と同じになっちゃいますね。真面目に話せば話すほど僕の存在意義がなくなっていくという、恐ろしいジレンマ。  まあ、つまり新興宗教団体のちょっとした会合のために、今こうして集まっている人たちがいるわけです。  老若男女が入り混じった集団に見つめられ、壇上に立つのは30代半ばの女性と、10代半ばで身長は低めで短い髪を頭の横で一房縛った少女。  そう、この少女のほうがこの物語の実質的な主役。その名も、本名はともかくとしてとりあえず、ナビちゃんです。僕の命名です。 「今日から、どうぞよろしくお願いします」  そう言ってお辞儀をして挨拶を終えるナビちゃん。  経緯も事情もはっきり言って事件に関係しないので特に説明しませんが、入信したわけですね。  ただし先に言っておきますけど、今後この宗教の信者として生きていくことには別になりません。ニワカです。  ただ、それを言うならここにいる信者のほとんどは入信して一年以内。  壇上から降りて、ナビちゃんは信者さんたちが並んでいる、端の椅子に腰掛けて壇上に残っている女性を見上げます。  長い黒髪を頭の後ろで縛った、やや吊り目の全体的に細長い印象の女性。この人だけがこの場では古参ということになります。  今回格好が皆白い服なので、呼び名を決めるのが難しいですが……この女性はなんとなく狐っぽいので狐さんにしましょう。妖怪みたいですね。  その狐さんが柔和な笑みで信者の皆さんに語りかけます。 「昨日も普段どおり規則正しく、お祈りも欠かすことなくきちんとされていらっしゃったとのお話を聞き、皆さんの信じる心の強さに日々私は感動いたしております」  ある種胡散臭いほど穏やかな空気が玄関ホールを包みます。
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