推理小説案内人 ―小さな密室ガイド―

問題篇

　死体です。怖いです。それはつまりこれが初仕事だということを示唆してます。

　悲鳴があったらドラマが盛り上がりそうですけど、どうやら僕はそういうタイプではなかったみたいです。まあここに悲鳴があっても邪魔なだけでしょうけどね。

　さっきも言いましたけど、殺されたのは痩せたおじさんです。細い紐状のもので絞殺されていますが、凶器は現場付近にはありませんでした。つまり、神として断言しますが、犯人が持ち去りました。また、レストラン内に凶器になり得るものはありませんでした。

　死体は洋式の便座に座っていましたが、上から全身を覆うように薄いシーツが掛けられていて、最初に発見されたとき、死体はまったく見えませんでした。ミステリーです。でもちゃんと理由があります。

　首にはしっかり紐の跡があり、被害者が掻き毟った跡もありました。怖いです。

　ちなみにこの人が持っていたリュックサックは死体の足元にありました。中身は財布、スーパーのレジ袋、その中にレシート、飲みかけのお茶のペットボトル、以上です。レシートにはそのお茶とお菓子を買った記録がありました。