episode.1 出会いは突然に

10/22
前へ
/227ページ
次へ
「めっちゃいい匂いする! 高見、それ俺にくれよ 」 華奢(きゃしゃ)な体付きをした制服姿の男子が、茶髪の前髪ぱっつんにポニーテールが可愛い2年の高見ちゃんに声を掛けた。 「だーめ! これは、もうあげる人が決まってるの 」 「なんだよ〜、ケチだなぁ 」 「それより、あんた美術部でしょ? こんなところで、遊んでていいの? 」 「サボってるわけじゃねーよ。 今、先輩たちとデッサンのモデルを探しに…… 」 2人が言い合っている時、彼の後ろから「どうかした?」と、顔を出したのが星名くんだった。 星名くんって、美術部だったんだ。 「〝想いを届けたい人〟か。 素敵なテーマだね 」 ホワイトボードの文字を見て、星名くんが優しく微笑んだ。 目が触れ合い、咄嗟(とっさ)に目を()らしてしまった。 少し頬が熱くなっていた。 感じ悪かったかな。 料理部の女子たちは星名くんに、黄色い声をあげている。 この状況をどうしたらいいかの分からず、私は隣にいる周部長とラッピングの作業を続けた。 しばらくすると、彼らの姿は見えなくなっていて、私は強張っていた肩の力を抜いた。 「鹿島せんぱいっ♪ 」 目の前に、可愛らしい顔型のクッキーが差し出された。 視線を上げると、少し照れ臭そうな表情をした高見ちゃんが立っていた。
/227ページ

最初のコメントを投稿しよう!

124人が本棚に入れています
本棚に追加