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「めっちゃいい匂いする! 高見、それ俺にくれよ 」
華奢な体付きをした制服姿の男子が、茶髪の前髪ぱっつんにポニーテールが可愛い2年の高見ちゃんに声を掛けた。
「だーめ! これは、もうあげる人が決まってるの 」
「なんだよ〜、ケチだなぁ 」
「それより、あんた美術部でしょ? こんなところで、遊んでていいの? 」
「サボってるわけじゃねーよ。 今、先輩たちとデッサンのモデルを探しに…… 」
2人が言い合っている時、彼の後ろから「どうかした?」と、顔を出したのが星名くんだった。
星名くんって、美術部だったんだ。
「〝想いを届けたい人〟か。 素敵なテーマだね 」
ホワイトボードの文字を見て、星名くんが優しく微笑んだ。
目が触れ合い、咄嗟に目を逸らしてしまった。
少し頬が熱くなっていた。
感じ悪かったかな。
料理部の女子たちは星名くんに、黄色い声をあげている。
この状況をどうしたらいいかの分からず、私は隣にいる周部長とラッピングの作業を続けた。
しばらくすると、彼らの姿は見えなくなっていて、私は強張っていた肩の力を抜いた。
「鹿島せんぱいっ♪ 」
目の前に、可愛らしい顔型のクッキーが差し出された。
視線を上げると、少し照れ臭そうな表情をした高見ちゃんが立っていた。
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