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「いつも困った時に、傍にいてくれて、助けてくれる。 そんなの、映画や漫画の世界だけだと思ってた。 湊くんが、私の心の声に応えるように来てくれるのはどうして? 」
胸がいっぱいで頭が混乱して、自分が何を言っているのか分からなくなっていた。
湊くんの優しさを、ただの親切で終わらせたくなかったのかもしれない。
「王子だなんて、現実はそんな綺麗な物じゃないよ 」
湊くんの表情が曇り、どこか寂しそうな繕った笑顔に見えた。
「ここにいたってことは、さっきの話聞いてたよね? 」
私は目を泳がせながら、気まずい顔で頷くが、私とは反対に彼の眉は穏やかだった。
「彼の言う通りだよ。 だから、何も言い返せなかった 」
ーー君には分からないよ。
さっきの湊くんの言葉が脳裏に浮かんで、まるで自分に言われているような感覚に襲われた。
言う通りとは、特別な感情がないと言うことか、それとも八方美人だと言われたことなのか。
そよそよと囁くように、夏風は草木と一緒に私の心をも揺らす。
私は、あなたの事を何も知らないんだ。
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