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「日頃ペアでお世話になってる、鹿島先輩へのお礼です。 先輩の顔クッキー、食べて下さい♪ 」
「高見ちゃん、ありがとね! すごく嬉しい。 可愛くって、食べるのがもったいないよ 」
頬がこぼれ落ちそうな笑みで、私はクッキーを受け取った。
あげる人が決まってると言っていたのは、私の事だったんだ。
自分のために作ってくれていたなんて、思いもしなかったから嬉しかった。
こうして、心のこもった物を貰えるって、とても幸せな気持ちになるんだと改めて知った。
片付けを終えた私は、ある人の姿を探していた。
演劇部の打ち合わせを終えた比茉里ちゃんと教室で合流して、私は周りの人影を意識しながら歩いた。
校内、校庭どこにも彼の姿はなく、駅まで向かう道でも見つける事は出来なかった。
「それ、藤波くんにあげるの? 」
私の手に下げている小さな紙袋を見て、比茉里ちゃんは眉間にシワを寄せた。
「そのつもりだったけど……もう帰っちゃったみたいだし、明日渡そうかな 」
唯一、高校生活で私が淡い想いを寄せた相手。
〝想いを届けたい人へ贈る〟というテーマであるからには、今回どうしても渡したかった。
藤波くんと話すきっかけにして、思い出になればいいなと思っていた。
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