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昼休みの終了を告げる音楽が鳴り始める。
下津くんと廊下で別れると、比茉里ちゃんは周りを気にしながら私の腕に絡み付く。
尾行している警察のように、声を潜めた。
「下津くん、何企んでると思う? 」
「企む……? 私は、比茉里ちゃんがダブルデートなんて言い出してびっくりしたよ 」
廊下を降りながら、私は眉を下げた。
私の腕を掴んでいる為、彼女は降りづらそうに足を出す。
「下津くんって、チャラそうだけど意外と鋭いし周りをよく見てるよね。 あれは、一筋縄ではいかない気がするんだー 」
確かに、見かけによらず頭が良くて頼りになるイメージはある。
私は頷きながら、彼女の話を黙って聞く。
「そこで、急遽予定変更! 」
「予定変更? 」
「ダブルデートは、純粋に親睦を深めるためで探りは入れない。 多分、詳しく教えてもらえない気がするんだよね。 まぁ、小さい事でも何か情報が掴めればラッキー程度で! 」
そして、比茉里ちゃんが更に私の耳に口元を近付ける。
「放課後、ちょっと付き合ってね 」
そう話す彼女の声が、一段と弾んでいるように聞こえた。
下校前、私たちは美術室へと向かった。
ひとつずつ鉛が増やされるように、段々と足取りが重くなって行った。
宣戦布告をされてから、瀬崎さんに初めて会う用件がこれだなんて。
胸の中では、不安の風船が膨らんでいた。
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