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藤波くんが瀬崎さんのことを好きだという噂は、1年生の頃から風の噂で聞いた事があった。
従兄妹なら、どうしてそんな変な噂が流れていたんだろう。
噂とは、根も葉もないことも作り上げてしまう恐ろしい世界だ。
呆気に取られた顔をして、比茉里ちゃんは声を荒げる。
「あんた達が、紛らわしい会話するからでしょ 」
「自己中・無神経・おまけに態度が大きい。 マシなの顔だけだから、私がアイツと従兄妹だなんて、死っんでも知られたくないの 」
「どの口が言ってんの 」
比茉里ちゃんは、低い単調な声で瀬崎さんに突っ込む。
「ココアする意味もないから、教えたくもないの! とにかく、あんた達絶対公言しないでよね 」
そう言って瀬崎さんは、私たちにビシッと人差し指を向ける。
藤波くんは不器用そうだけど、根は悪い人じゃないと思うけどな。
体育祭の時だって、瀬崎さんの事を心配していたから、湊くんにあんな風に詰め寄ったんだと思う。
「てゆーか、あんた達なんでここにいるの? 部外者立ち入り禁止! 」
内巻きロブを耳に掛けて眉をキッと釣り上げながら、彼女はまた人差し指を立てた。
すると、何かを思い出したように、比茉里ちゃんがパンッと手を叩く。
「瀬崎さん、部活終わったら暇? 」
「なんでよ 」
眉間にしわを寄せ、瀬崎さんは疑心を抱いたような尖った声を出す。
「女子会しよっ! 」
比茉里ちゃんの真昼のように明るい声が、美術準備室に弾むように響いた。
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