episode.8 恋セヨ乙女たち

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episode.8 恋セヨ乙女たち

放課の図書館は、利用するほとんどの生徒が勉強をしている。 今は10人程の姿だが、とても静かな空間だ。 彼女らに混じって、比茉里ちゃんを待つ時間、私も問題集の復習をする。 来週の頭に期末考査を控えている為、明日から全ての部活が休みになる。 そうなると、もっと人は増えるだろう。 カリカリとシャープペンの芯が紙と擦れる音が響く中、私はふと手の動きを止める。 まさか、あの瀬崎さんが私たちの誘いを承諾するとは思わなかった。 おそらく、比茉里ちゃんが「星名くん情報交流会」と変な発言をしたからだろう。 誘った瞬間の微妙な雰囲気から、表情が明らかに一転した瀬崎さんの顔が思い出される。 そして、現在に至る。 帝駅を出てすぐにある、学生が多く集うM plazaに私たちは来ている。 1階にあるBANA7(バナナ)カフェで、私の前に座っている瀬崎さんがアイスティーを飲んだ。 それをチラリと見ながら、私もバナナジュースを口にする。 「で、あんた達誰? 」 瀬崎さんの隣に座っている女子が、落ち着いた声色で呟いた。 顎下まである前髪は中央で分かれていて、背中まで伸ばされた明るい茶髪は緩いウェーブがかかっている。 感覚が少し広めの横に大きな目、小さな鼻と口。 ほどよく綺麗に焼けた肌。 瀬崎さんは大人っぽくてどこか色気のある印象だが、この人はクールビューティーな雰囲気が漂っている。 「それは、こっちの台詞なんですけど。 うちらはを誘ったんだけど、どちら様? 」 比茉里ちゃんは持っていた飲みかけのバナナジュースを置くと、目の前の彼女を見て首を傾げる仕草を見せた。
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