episode.1 出会いは突然に

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波打つ鼓動を高鳴らせて、徐々に距離を縮めていく。 今、周りに生徒はほとんどいない。 彼の前に、知らない女子が1人いるのみ。 「あ、あの……ふ、藤波くんっ! 」 私は、蚊の飛ぶような声を振り絞って、彼を呼び止めた。 振り返った彼の表情は、驚いたように目が強張っていた。 「あの……これ、部活で作りました。 良かったら、貰ってください 」 震える手で紙袋を差し出す。 藤波くんは、「あ、あぁ……」と小さな声を出すと、鼻を触りそれを受け取った。 とにかく、その場から早く逃げ去りたくて、私は比茉里ちゃんが待つ校舎へ一心不乱に走った。 彼女に渡せた報告をしたら、一気に全身の力が抜けた。 帰りの電車も家へ着いてからも、胸のドキドキは治らなかった。 受け取ってもらえた喜びで溢れて、それだけで満足していた。 少し驚いていたようだったけど、一生懸命心を込めて作って良かった。 高校生活最後の、良い思い出になった。 ーーその淡い気持ちは、1日も経たないうちに、呆気(あっけ)なく崩れ落ちた。
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