episode.8 恋セヨ乙女たち

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クールビューティーは無表情のまま、噛んでいるガムをプーと膨らまし、パチンと割った。 「(あたし)明智小雪(あけちこゆき)。 沙絢に頼まれてついて来たんだけど、この子ら後輩? 」 瀬崎さんはククッと笑いを堪えている。 私の隣では、比茉里ちゃんが眉間をピクピクと動かしている。 「タメで悪いか! 小麦肌で小雪のくせにっ!」と、突っ込みそうな勢いだ。 お怒りメーターが上昇しているに違いないけど、どうか抑えて欲しいと願う。 胸をハラハラとさせながら、私は少し肩を小さくして口を開く。 「鹿島結奈です。 一応、3年生なんでタメです。 よろしくお願いします 」 まるで合コンにでも来たような自己紹介。  きっとこんな感じなんだろうと、未知の世界を想像して変な気分になった。 ーーガタッ 比茉里ちゃんが勢いよく立ち、机に前屈みになる。 「私は3年7組! 恵比寿比茉里! 趣味はMV鑑賞 」 威勢のいい挨拶に、明智さんがプッと吹き出した。 瀬崎さんは、もう声を出して笑っている。 「やばっ、最後に押忍って付いてる勢いやん。 受けるんだけど 」 何か言いたげな目で明智さんを見てから、比茉里ちゃんはキッと瀬崎さんに視線を向けた。 涙を浮かべて歓笑していた彼女が、瞬時に真顔に戻った。 女優かと思う程の早さだ。 「親しくもないあんた達の女子会に、沙絢が1人で来る分けないでしょ。 せっちーはいい子だから、安心して 」 涼しい顔をしてのうのうとアイスティーを飲むと、彼女はサンドパンを頬張った。 「第一印象は、とっても感じ悪いけどねー 」 比茉里ちゃんは横を向いて、私に聞こえるほどの声で呟いた。 このカオスな状況に、私は苦笑するしかなかった。
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