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クールビューティーは無表情のまま、噛んでいるガムをプーと膨らまし、パチンと割った。
「私は明智小雪。 沙絢に頼まれてついて来たんだけど、この子ら後輩? 」
瀬崎さんはククッと笑いを堪えている。
私の隣では、比茉里ちゃんが眉間をピクピクと動かしている。
「タメで悪いか! 小麦肌で小雪のくせにっ!」と、突っ込みそうな勢いだ。
お怒りメーターが上昇しているに違いないけど、どうか抑えて欲しいと願う。
胸をハラハラとさせながら、私は少し肩を小さくして口を開く。
「鹿島結奈です。 一応、3年生なんでタメです。 よろしくお願いします 」
まるで合コンにでも来たような自己紹介。
きっとこんな感じなんだろうと、未知の世界を想像して変な気分になった。
ーーガタッ
比茉里ちゃんが勢いよく立ち、机に前屈みになる。
「私は3年7組! 恵比寿比茉里! 趣味はMV鑑賞 」
威勢のいい挨拶に、明智さんがプッと吹き出した。
瀬崎さんは、もう声を出して笑っている。
「やばっ、最後に押忍って付いてる勢いやん。 受けるんだけど 」
何か言いたげな目で明智さんを見てから、比茉里ちゃんはキッと瀬崎さんに視線を向けた。
涙を浮かべて歓笑していた彼女が、瞬時に真顔に戻った。
女優かと思う程の早さだ。
「親しくもないあんた達の女子会に、沙絢が1人で来る分けないでしょ。 せっちーはいい子だから、安心して 」
涼しい顔をしてのうのうとアイスティーを飲むと、彼女はサンドパンを頬張った。
「第一印象は、とっても感じ悪いけどねー 」
比茉里ちゃんは横を向いて、私に聞こえるほどの声で呟いた。
このカオスな状況に、私は苦笑するしかなかった。
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