episode.8 恋セヨ乙女たち

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明智さんのコーヒーが運ばれて来ると、比茉里ちゃんがコホンと咳払いをする。 「まぁ、気を取り直して女子会という名の〝情報交流会〟開始しましょう! 」 彼女の掛け声に、意外にも明智さんが「イェーイ」とグラスを掲げた。 すでに口を付けていたが、私もバナナジュースを持って小さく乾杯をする。 「そういえば、さっき〝せっちー〟って言われてたけど、なんでなの? 名前、小雪なんでしょ? 」 海老サラダをつまみながら、比茉里ちゃんが質問を投げかける。 「小雪、雪、せつ、せっちー。 まぁ、こう呼ぶのは沙絢くらいだけどね。 結構気に入ってんだ 」 明智さんは、落ち着きのある低めの声で答える。 煙草を(くわ)えていても、違和感が無さそう。 「で、これは何の交流会? 」 この様子だと、明智さんは何も知らされずに連れてこられたんだろう。 主旨を知ったら、どんな反応をするだろう。 「一応、星名湊くんを語ろうの会です…… 」 砂漠の真ん中に放置されたような顔をして、明智さんは手の動きを止めた。 自分で言いながら羞恥が湧き立ってくる。 火照(ほて)る頬と喉を、一気に冷水で冷ます。 「もしかして、かっしーとひまりんも星名湊が好きなの? じゃあ、沙絢とライバルじゃーん。 やば、おもしろー 」 抑揚が少ないせいか、言葉遣いと声のトーンがアンバランスに聞こえて、本当に面白いと思っているのか疑問になる。 そして、唐突の〝かっしー〟と〝ひまりん〟呼びに、どう反応したら正解なのか分からない。 とりあえず、スルーした方が良いのだろうか。
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