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瀬崎さんは、湊くんと同じ中学だった他校の知人から〝誰とも付き合わない〟という話を聞いたらしい。
それは1年生の頃のことで、深いことは知らないと言った。
そして、もうその人とは連絡を取り合っていないと。
彼女に湊くんの絵の話をするべきか悩んだ。
でも、言えなかった。
上弦の月が輝きを放つ、午後8時半。
ーーバタンッ
車のドアを閉める音が、寂然たる空に響く。
お姉ちゃんが車から降りてくるのを待って、私は玄関のドアを開けた。
自分の部屋に行き、お気に入りである花柄のオールインワンの部屋着に着替える。
そのノースリーブの上から、薄いカーデガンを羽織ると、この時期は丁度良い。
スマホの待ち受け画面に、ココアトークの通知が出ている。
比茉里ちゃんから、グループトークの招待が届いているとこに気が付いた。
『恋セヨ乙女会』と記されたグループは、既に恵比寿比茉里・明智小雪・瀬崎沙絢が参加している。
「何これ、誰が作ったんだろう。 瀬崎さん達もちゃんと参加するんだ 」
思わず顔を綻ばせて、私は「参加」の文字へ指を運ぶ。
ーーピロロン
グループに入るや否や、ココアトークの通知音が鳴り、「恋セヨ乙女会」のトークが開始された。
『小雪 : グループ名だっさーww 20:04 』
『比茉里ちゃん : そのまんまじゃん 20:04 』
『小雪 : でも樹もよく言ってるわー 20:05 』
『比茉里ちゃん : え(΄◉◞౪◟◉`) 20:5 』
2人のやり取りを見ながら、思わずクスッと声を漏らす。
ーー青は短し、恋せよ乙女。
下津くんが、何度かそう言っていたことを思い出した。
結局、あの言葉にはどういった意味が込められていたのか未だに謎だ。
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