episode.8 恋セヨ乙女たち

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瀬崎さんは、湊くんと同じ中学だった他校の知人から〝誰とも付き合わない〟という話を聞いたらしい。 それは1年生の頃のことで、深いことは知らないと言った。 そして、もうその人とは連絡を取り合っていないと。 彼女に湊くんの絵の話をするべきか悩んだ。 でも、言えなかった。 上弦の月が輝きを放つ、午後8時半。 ーーバタンッ 車のドアを閉める音が、寂然(じゃくねん)たる空に響く。 お姉ちゃんが車から降りてくるのを待って、私は玄関のドアを開けた。 自分の部屋に行き、お気に入りである花柄のオールインワンの部屋着に着替える。 そのノースリーブの上から、薄いカーデガンを羽織ると、この時期は丁度良い。 スマホの待ち受け画面に、ココアトークの通知が出ている。 比茉里ちゃんから、グループトークの招待が届いているとこに気が付いた。 『恋セヨ乙女会』と記されたグループは、既に恵比寿比茉里・明智小雪・瀬崎沙絢が参加している。 「何これ、誰が作ったんだろう。 瀬崎さん達もちゃんと参加するんだ 」 思わず顔を綻ばせて、私は「参加」の文字へ指を運ぶ。 ーーピロロン グループに入るや否や、ココアトークの通知音が鳴り、「恋セヨ乙女会」のトークが開始された。 『小雪 : グループ名だっさーww 20:04 』 『比茉里ちゃん : そのまんまじゃん 20:04 』 『小雪 : でも樹もよく言ってるわー 20:05 』 『比茉里ちゃん : え(΄◉◞౪◟◉`) 20:5 』 2人のやり取りを見ながら、思わずクスッと声を漏らす。 ーー青は短し、恋せよ乙女。 下津くんが、何度かそう言っていたことを思い出した。 結局、あの言葉にはどういった意味が込められていたのか未だに謎だ。
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