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強い日差しが肌を刺す8月初旬。
待ちわびた夏休みが始まり、10日が過ぎようとしていた。
グループココアの『恋セヨ乙女会』は、相変わらず、たわいの無い文字が飛び交い、ほとんどが比茉里ちゃんと明智さんのやり取りになっていた。
比茉里ちゃんは、学園祭の準備に追われる毎日を過ごしているらしい。
明智さんは、家族で沖縄旅行中だと報告があり、多くを語らない瀬崎さんのプライベートは謎のままだ。
私はと言うと、周さんに誘われて映画へ行く約束をしており、その当日の朝を迎えていた。
アイボリーのレーストップスにデニムのショートパンツ。
ひとつに結った編み込みを、フィル・ルージュのバレッタで留めている。
少し早めに着いてしまった私は、M Plazaのシネマ前で彼女を待っていた。
「鹿島ちゃん! 」
颯爽と歩いて来た周さんを見て、私は絶句した。
黒のハット帽に白のTシャツ、黒のレザーパンツにレースアップのショートブーツで現れた彼女は、周りの客の注目を浴びていた。
胸に晒しを巻いているのかと疑いたくなるような、細身男子のプロポーション。
ーーあの人、背高くてちょっとかっこいいよね。
ーー女の子……だよね?
ーーいや、女顔の男の子でしょ。
さすが、校内でジェンダーレス女子と言われて女子から人気がある彼女らしい私服姿。
尚且つとても似合っていると感心する。
「まだ時間あるし、その辺ぶらぶらしようか 」
「そうだね! 私、タピオカ飲みたいなぁ 」
「いいね! でも並びそう 」
映画のチケットを買ってもまだ時間に余裕があったため、私たちは店内を周ることにした。
学校以外で、周さんと2人で会うなんて初めて。
部活で一緒に活動していた時とは空気感が違って感じて、とても緊張した。
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