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朝の情報番組、『あさピカ』で今日の占いが流れ始めた。
私は、右往左往しながら支度を続ける。
『……今日の最下位は、水瓶座のあなた。 一難去って、また一難!とにかく、今日はツイてない。 ラッキーアイテムは、メッセージカー…… 』
「わあぁぁ、遅れるっ! 行ってきますっ! 」
「いってらっしゃい! 気を付けてね 」
占いが始まる前に家を出ると、丁度良い時間にバス停に着く。
少し遅くなったけど、なんとかバスに間に合った。
混み始めている電車に乗り込んで、比茉里ちゃんと合流する。
藤波くん、今日はこの車両に乗ってないみたい。
残念のような、ホッとしたような複雑な気分だった。
「結奈ちゃん、水瓶座だよね? 見て、今月の運勢。 面白いこと書いてある 」
比茉里ちゃんの手には、人気雑誌が握られていて、そこに載っていたのは、あまり喜ばしくない文章だった。
〝長らく続けたことに終止符の時。新しい風が吹くが、それもまた一波乱ありそう。 今しばらく運は停滞〟
「これは、幸せへの兆し……。 全くその兆しが見えない…… 」
「凄い……内容だね。 ま、まあ、所詮は雑誌の占いだから。 それより、私が注目したのはこっち! 」
比茉里ちゃんの指先には、ラッキーパーソンの文字。
そこには、〝天使のような人〟と書かれていた。
「ね、面白いでしょ? 」
目を丸くしてこくりと頷くと、私は窓の外へ目を向けた。
空には、わたあめのような入道雲が湧き立っていた。
絵に描いたような美しい雲に、沈んだ心が洗われた気がした。
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