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上映時間10分前。
映画館の売店でハニーチョコ味のポップコーンを買って、私たちは会場内へ足を運んだ。
最後列の真ん中に座る。
予告が流れ始めると、私は小さな声で話しかけた。
「周さんって、中学生の時から料理部だったの? 」
「中学の時は、バレー部だったんだ。 何を血迷ったのか、高校入って突然料理部! 」
「確かに、背が高いからバレー部って納得 」
きっと有力な選手だっただろうに、どうして続けなかったのだろう。
タピオカを飲みながら、私は黙って話の続きに耳を済ませる。
「最初の頃は後悔したけど、今は料理部にしてよかったって思ってる。 料理がもっと好きになったし、みんなに出会えたから。 1番は鹿島ちゃんにね 」
耳元で囁かれ、不意打ちにドキッとしてしまう。
女の子なのに見た目が中性的だからか、こんな絡み方をされると反応に困ってしまう。
「周さんや料理部のみんなと出会えて、私も幸せだよ 」
彼女の顔が見れなくて、スクリーンを見ながら笑みを浮かべた。
結局、いつも聞きたい肝心なことは聞けない。
でも、楽しいから今はいいかな。
そう思った時、周さんが更に近寄って私に耳打ちをする。
「鹿島ちゃん、星名湊と仲良いよね? 」
その名前を聞いただけで、私の頬は一瞬にして熱を帯びた。
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