124人が本棚に入れています
本棚に追加
小さく縦に首を動かすのを確認すると、周さんは少し低めの声色で言う。
「星名くんのこと、好き? 」
「えっ、えっと…… 」
急に真面目な声で質問をするから、言葉に詰まった。
どう答えたらいいのか、戸惑ってしまう。
横顔の彼女を盗み見るように、私は少しだけ隣に視線を送る。
凛々しい表情で、彼女は真っ直ぐスクリーンを見つめていた。
「ただの友達なら、その方がいいんだけど 」
「それって……どういう意味? 」
ーー湊くんは、誰とも付き合わない。
その言葉が脳裏を過り、心拍数が上昇する。
「星名くんは…… 」
予告と上映マナーの注意事項が終わり、薄暗かった辺りは暗闇の世界となった。
「また後でね」と、周さんは口を閉ざし、始まった映画を見だした。
マナーとして当たり前の行動で、私も黙ってスクリーンへ目を向けた。
要所要所に笑いやハッとするシーンがあり、見応えがあった。
クライマックスのシーンはとても感動した。
大好きな恋愛映画だったのに、全力で集中することが出来なくて、頭はすぐに湊くんのことを考えようとしていた。
最初のコメントを投稿しよう!