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上映が終わって、私たちは足の向くままに映画館を出る。
映画の話で盛り上がっている周さんに、なかなか湊くんの話を持ち出せない。
興奮が冷めない様子の彼女は、恐らく上映前の話は忘れているのだろう。
ふらりと21アイスへ入り、お互いに夏特フェアのトリプルを頼んだ。
空いている角隅の席に腰を下ろして。
「恋愛かぁ……あんな大恋愛なかなか経験できないよね 」
「お互いの愛が凄いよね。 周さんは、好きな人いるの? 」
「……鹿島ちゃん、それ聞いちゃう? 」
少し気まずそうに白い歯を見せながら、周さんは誤魔化すような薄笑いを浮かべる。
「言いづらいなら、答えなくていいよ!」
慌てて付け足すと、彼女は私を手招きしてグッと顔を近づける。
「実は報われない恋の真っ最中 」
「えっ、そうなの?! 変な事聞いてごめんね 」
口元をハッと抑え、私は肩をすくめた。
失礼な事を聞いたかもしれないと、不安になったが、彼女は「ううん」と、穏やかに首を振った。
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