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午前の授業は早いもので、残り1限。
数学の選択授業は、7・8組の半数ずつが合同で行われる。
私と比茉里ちゃんは、8組の教室で席に着いた。
先生の諸事情で、初めの20分は自習になり、問題集を解くことになった。
真面目に勉強する人、私語をする人、寝ている人と周りは様々だ。
教科書を見つめて頭を悩ませていると、1列挟んだ席から、8組の女子の声が耳に入って来た。
少し聞き取りにくかったが、「昨日、藤……から……渡され……」というような内容で、私の心臓はドクンと跳ね上がった。
いけないと思いながらも、思わず聞き耳を立ててしまう。
その女子は、猫毛を無造作にまとめたお団子頭で、頬のそばかすが特徴的な子。
胸騒ぎがしたのは、藤波くんと同じ中学出身の、三原那子さんだったから。
ーー昨日の放課後。
結奈と別れた後、藤波は駅のホームで三原那子を見つけて声を掛けた。
「これ、やるよ 」
そう眠そうな目をして、彼は受け取ったばかりの紙袋を差し出した。
「何これ?」
那子が紙袋を開けると、可愛く包装された小さな箱が入っていた。
「げっ」と言うような表情をすると、藤波は「部活で作ったんだってさ」と、何事もなかったようにスマホを触りだした。
「まあ、別に食べても良いけどさ…… 」
那子が呆れた声を出すと、後ろから誰かに声を掛けられた。
「それ、君が貰った物でしょ? どうして、その子にあげるの? 」
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