episode.9 夏の秘密

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それから、私たちは海で水を浴び、砂浜でビーチバレーをして、屋台の焼きそばとかき氷を食べた。 想像以上に楽しくて、来て良かったと心から思えた。 「いやぁ〜、ビーチバレー楽しかった! 最高だったよ 」 「樹が言うと変態おやじに聞こえるのは気のせい? 」 「マシュマロボディーに鼻の下伸ばしてたもんね……樹くん 」 「そーんなわけ……えっ、樹くん? 」 一瞬思考が止まったように、下津くんが固まった。 比茉里ちゃんが名前で呼んだことを、聞き逃さなかったみたい。 正直、私も驚いている。 「この機会に仲良くなったってことで……だめ? ほら、せっちーも名前呼び捨てだし 」 照れ隠しなのか、彼女は口を少し尖らせて視線はそっぽを向いている。 「いや、ちょっとびっくりしただけ。 嬉しいよ 」 胸を撫で下ろすように、彼女の表情は晴れやかになった。 比茉里ちゃんにとっては、下津くんの言葉が魔法なんだ。 恋は風船のように、私たちの気持ちをふわふわとどこまでも連れて行ってくれる。 青い空を飛んで雲の上も越えていく。 強くなれるし優しくあれる。 だけど、時には傷付いてパンッと割れてしまう事もある。 いつかその日が来るかもしれない。 でも今は、彼と一緒にいられるだけで幸せだった。
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