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温泉から出てから、みんなは隣の男子部屋へ遊びに行くと言った。
飲み物を買ってから行くと告げて、私は下へ降りた。
外はもう暗くなっていて、中庭へ続く窓からは綺麗な十六夜の月が見える。
〝いざよい〟は、ためらうという意味があるらしい。
昔、どこかで聞いたことがある。
その時、中庭を歩く湊くんの後ろ姿が目に飛び込んできて、私はこっそり彼の後を追った。
石亭を通り過ぎ、小さな池に架かる橋の上で彼は足を止めた。
まるで探偵にでもなったように、私は近くの大きな狸の置物の後ろに身を潜める。
興味本位で追って来てしまったけれど、誰かと待ち合わせでもしていたらどうしよう。
急に不安な気持ちになって、私はその場を離れようとした。
「最近、分からなくなるんだ。 ここのままで良いのか。 僕の未来は、どこにあるんだろうって 」
湊くんの声に、私は息を潜めてその場に留まった。
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