episode.9 夏の秘密

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温泉から出てから、みんなは隣の男子部屋へ遊びに行くと言った。 飲み物を買ってから行くと告げて、私は下へ降りた。 外はもう暗くなっていて、中庭へ続く窓からは綺麗な十六夜の月が見える。 〝いざよい〟は、ためらうという意味があるらしい。 昔、どこかで聞いたことがある。 その時、中庭を歩く湊くんの後ろ姿が目に飛び込んできて、私はこっそり彼の後を追った。 石亭を通り過ぎ、小さな池に()かる橋の上で彼は足を止めた。 まるで探偵にでもなったように、私は近くの大きな狸の置物の後ろに身を潜める。 興味本位で追って来てしまったけれど、誰かと待ち合わせでもしていたらどうしよう。 急に不安な気持ちになって、私はその場を離れようとした。 「最近、分からなくなるんだ。 ここのままで良いのか。 僕の未来は、どこにあるんだろうって 」 湊くんの声に、私は息を潜めてその場に留まった。
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