episode.9 夏の秘密

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誰かに話している口調。 相手が相槌を打っているのか、彼は少し間を開けて話を続けた。 「今に目を向けるのか、未来を見るべきなのか。 正直少し怖いんだ。 どっちを取っても、正解を決めるのは僕自身だけど 」 誰と何の話をしているんだろう。 ゆっくり瞬きをしながら、落ち着かない胸を押さえる。 なんだか聞いちゃいけない気がする。 「結奈ちゃん、こっち出ておいでよ 」 「えっ、あ、はい! 」 思わず返事をして立ち上がると、私はしまったと口元を押さえた。 それを見ていた湊くんは、柔らかな表情でクスッと笑った。 「あの、気付いてたの…… ? 」 「結奈ちゃんがここに来るの、見えてたからね 」 「ごめんなさいっ」と、私は眉と頭を下げた。 「ちょっとした出来心で…… 」 「何か悪いことしたみたいだね 」 そうやって、湊くんはいつも笑って見守ってくれる。 だから、自分は特別なのかもしれないと余計に惹かれてしまうの。
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