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誰かに話している口調。
相手が相槌を打っているのか、彼は少し間を開けて話を続けた。
「今に目を向けるのか、未来を見るべきなのか。 正直少し怖いんだ。 どっちを取っても、正解を決めるのは僕自身だけど 」
誰と何の話をしているんだろう。
ゆっくり瞬きをしながら、落ち着かない胸を押さえる。
なんだか聞いちゃいけない気がする。
「結奈ちゃん、こっち出ておいでよ 」
「えっ、あ、はい! 」
思わず返事をして立ち上がると、私はしまったと口元を押さえた。
それを見ていた湊くんは、柔らかな表情でクスッと笑った。
「あの、気付いてたの…… ? 」
「結奈ちゃんがここに来るの、見えてたからね 」
「ごめんなさいっ」と、私は眉と頭を下げた。
「ちょっとした出来心で…… 」
「何か悪いことしたみたいだね 」
そうやって、湊くんはいつも笑って見守ってくれる。
だから、自分は特別なのかもしれないと余計に惹かれてしまうの。
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