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痺れかけた足を前に出して、ゆっくりと彼の待つ橋の上を歩いて行く。
隣に並ぶと、彼は何事もなかったような素振りでサラッと言った。
「さっきの話、結奈ちゃんにしてたんだよ 」
「私に……? 」
そういえば、周りに誰も居ない。
暗い橋の上は、わずかな灯りがぽわんと照らすのみで人影はなかった。
彼は囁く風のように静かに口を開く。
「未来が見える男の話……知ってる? 」
「……知らないかな。 最近のドラマか映画? 」
「そうだなぁ…… 」
胸に語りかけるように、彼はその話を教えてくれた。
ーーその男には未来が見える。
それは3秒後かもしれないし、1時間後、もしくは1週間後かもしれない。
いつ起こる出来事かは予測出来ない。
突然、映画のワンシーンを見ているように、自分やその周りの人たちの未来が脳裏に浮かぶ。
だから、その子が困っている時や危ないところを助けることが出来た。
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