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橋の手すりに肘をついて、湊くんは遠い空を見つめていた。
綺麗な横顔から、そっと瞳を逸らす。
私も空を見上げた。
2人を照らすように、十六夜の月がこちらを見ている。
「その男が僕だよ 」
「えっ……と? 」
とぼけた顔でもしていたのだろう。
湊くんは、私を見て可笑しそうに爽やかな笑声をもらした。
この小さな脳みそでは、思考が追いつかない。
「クッキー、バレッタ、体育祭の事故……全部僕が見た未来なんだ。 それから、今ここにいる事もね 」
言葉で言われても、実感が湧かない。
未来が見えるなんて、そんな非現実的なことをすんなり受け入れられる頭が私にはない。
「王子なんかじゃなかったでしょ? 見えてしまうから気になって、ほっとけないから手を差し伸べる。 ガッカリしたでしょ 」
慌てて首を横に振る。
そんな事はないと、心の中で叫ぶ。
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