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「結奈ちゃん、さっきから何も言わないけど大丈夫? 」
少し落ち着きを取り戻したように、比茉里ちゃんは眉を潜めて私を見た。
「全然、平気じゃないよ。 ショックだったし、想像すると今にも涙出そう。 でも、比茉里ちゃんが変わりにたくさん言ってくれたから。 ちょっとスッキリした 」
強がりな笑みを浮かべて、おにぎりを頬張ってみる。
今更になって、心に溜まった涙が涙腺に押し寄せて来た。
「ただ、気持ちを伝えれたらって……少しでも、仲良くなれるならって……思っただけなんだけどな 」
自分を全否定されたようで、悲しかった。
藤波くんの事が、怖くなった。
もう二度と、恋なんて出来ないだろうなって……思ってしまった。
シクシクと大粒の雨を流す私の肩を、比茉里ちゃんは優しく抱いてくれた。
彼女の胸は温かくて、逞しかった。
気分が晴れきれないまま、放課後になった。
鉄の上履きを履いているような、重い足取りで部活へ向かう。
目を疑うように、私はビクッと足を止めた。
調理室の前に、星名くんが立っていたからだ。
嫌な予感が脳裏をよぎり、私は目を合わせないように視線を下げた。
来た道を引き返そうとしたら、「待って」と、優しく腕を掴まれた。
予期せぬ出来事に、頬が熱くなり一気に鼓動が高鳴る。
「ちょっと、いいかな? 」
少し気まずそうな星名くんを見て、昨日のクッキーのことだと確信した。
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