episode.1 出会いは突然に

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人がいない家庭科準備室へ入ると、星名くんは黙って中の鍵を閉めた。 「えっと、あのさ…… 」 言いづらそうにしている彼を見たら、なんだか急に申し訳なくなってしまった。 「……あの、昨日のクッキーですよね。 ありがとうございました 」 段々と小さくなる声。 気まずい顔をして言うと、星名くんは驚いたような表情を浮かべた。 「知ってたの? 」 「た、たまたま……風の噂で聞いちゃって 」 この場から、今にでも逃げ出したいくらい恥ずかしい。 出来るなら、透明人間になって消え去りたい。 林檎のように頬を真っ赤に染めながら、視線は徐々に落ちていった。 見覚えのある紙袋が、目の前に差し出された。 これ、どうして? 思わず顔を上げると、星名くんは申し訳なさそうに眉を下げた。 「これ、僕が貰ってもいいのかな 」 「え、えっと…… 」 そのままの包装を見て、私は複雑な気持ちになった。 開けられた形跡がなくて、小さな封筒に入ったメッセージカードが虚しさをより強調していた。 「貰ってもらえるなら、食べて下さい 」 捨てられなかっただけ、まだマシだよね。 そう言い聞かせながら、私は肩を落とした。 「持って帰ったんだけど、これには君の気持ちが詰まってると思ったら、急に開けられなくなって…… 」 紙袋を私の手に持たせると、星名くんはメッセージカードを取り出した。 空いている反対の手に、それをそっと握らせてくれた。
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