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彼が家庭科準備室を出たあと、私は複雑な思いで調理室のドアを開けた。
優しくて素敵な人だったな。
藤波くんとは、違う。
すでに活動の準備を始めていた周部長が、驚いた顔をして私に近寄ってきた。
「鹿島ちゃん、すごく異様なオーラをまとってるけど、大丈夫? 」
「それが、大丈夫じゃないんです。 でも、気にしないで 」
薄っぺらい笑みを浮かべて、私はいつも使う席へ着いた。
これ以上、クッキーは思い出したくなかった。
残り数名の生徒と顧問の柘植先生が入ってきた。
「はーい、みなさん注目。 眠そうな顔・暗い顔も、気を取り直して聞いて下さい! なんと! 『高校料理部 スイーツコンテスト』一次審査通過しましたぁ! おめでとうーっ! 」
自分で拍手するテンション高めの拓殖先生に、みんなが騒つき始めた。
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